薬剤師に求められることと薬剤師の未来

医療の多様化、高度化、超高齢化社会など、薬剤師を含む医療従事者を取り組む環境は大きく変化しています。

薬学部で学びながら、薬局実習、病院実習で薬剤師、医師、看護師を見ていて、今後の薬剤師について考えます。

医師や看護師などから何が求められているか、過去、現在、未来などについて考えてみました。




薬剤師の過去

西洋では1240年頃にシチリアで薬剤師という仕事が始まったとされています。

さらに、このころに医師と薬剤師がそれぞれの活動領域を分けるという医薬分業も始まり、現在の医療体系の元の形ができました。

そんなに昔から医薬分業が始まっていたなんて知りませんでした。

日本では漢方の考え方が主流であり、医師が診断をしたのちにそのまま薬を処方するという医薬兼業が普通でした。

これは西洋医学の考え方が取り入れられるまで続きました。

1874年になって、明治政府がドイツ発祥の医学を中心とした西洋医学を推奨し、医師、薬剤師の教育制度、免許授与制度を導入し、さらに

「医師たるものは、自らの薬を売ることを禁ずる」

と布告されました。

その後、1889年には「薬品営業並薬品取扱規制」が成立し、現在の医薬分業へとつながっています。

ここから、薬剤師の業務がはっきりとスタートました。

しかし、実際には医師は薬剤師の仕事をやってきていましたので、医師の中で薬剤師の役割を疑問視する考え方も深く根付いていたそうです。

確かに、後から出てきた職種に自分の仕事の半分を横取りされたと思ってしまうのも無理はないと思います。

わざわざ薬剤師を設置する意味や目的などが十分に認知されていない時代が続きました。

薬剤師の現在

薬剤師の数は非常に増えており、実際かなりの人数が存在しています。

薬剤師免許を持っている人だけでも30万人ほどいるそうです。

最近では、薬剤師は医者からの信頼を得始めたことからも、仕事の幅が非常に広がっています。

単純に医師からの処方箋を受け取り、薬を調剤する業務から、在宅業務、栄養指導、一方かなど様々な仕事が増えてきました。

さらに、薬剤師は医療現場において医師、看護師、患者をつなぐ重要なコーディネーターとしての役割も担うようになっています。

薬剤師は薬の知識と病気の知識の両方を兼ね備えた、いわば万能型の人材ですよね。

医師、看護師はどうしても病気の知識に偏りがちなところもあるので、薬剤師の存在は貴重でしょう。

薬剤師の仕事


薬剤師の仕事は主に下にあげられます。

調剤
医薬品情報管理
医薬品管理
服薬指導
処方チェック
疑義紹介

実際に私はこれらの仕事を薬学実習生として体験することができました。

体験談はこちら→薬学5回生に待ち受ける薬局実習、どんなことをやるのかを徹底紹介
薬局実習を実際に体験した時の感想を書いています^^

調剤業務や医薬品管理などは薬剤師として基本的な業務です。

また、最近では「モノからヒトへ」のスローガンが掲げられているように服薬指導が重要視され始めています。

薬剤師は機械的に薬を棚から取ってきて患者さんに渡すだけの時代は終わっています。

それよりもコミュニケーションを駆使して、患者さんに薬の情報を提供するだけでなく、さらに一歩踏み込んだやり取りをしていく必要が出てきています。

一方で、医師や看護師が薬剤師の仕事を正確に把握できているかは分かりません。

薬剤師さんてこんなこともできるんですね

という話を聞くことも多かったです。

チーム医療に参画する全ての役職に知ってもらうためにも、普段の業務だけでなく意見交換会や勉強会、交流会などに参加することが必要があるようです。

医師から薬剤師に求められている役割


医師から薬剤師に求められていることについても考えてみました。

基本的に医師は一人で診断をして、一人で決定を下します。

大きな病院や、重傷な患者に対しては複数の医療関係者が関わりカンファレンスをしていると思いますが、ほとんどの場合では一人で判断をくだしていますよね。

実際、内科のクリニックにお邪魔する機会がありましたが、全ての診断を医師一人が行っていました。

一日に何十人、何百人と来院する患者さん全員と会話をして、診断して、処方を決定します。

どうしてもミスが伴うものであり、薬剤師がここに活躍の場があると思いました。

薬剤師は医師の診断をアシストすることはできませんが、処方内容についてならきっちりと手助けすることができますよね。

医師の仕事の何割かを薬剤師と一緒に進めることによって医師の負担軽減と、薬剤師の活躍の両方を実現できると思います。

「薬剤師は医師のパートナー」という言葉もあるように、医師から頼られる薬剤師が今後求められると思います。




薬剤師に必要なこと


薬剤師は専門的な知識をかなり深いところまで持っていると思います。

特に、薬理学や薬物動態学、製剤科学については医師や看護師の中でも突出した知識を持っていると思います。

薬理学を知らない人は多いですし、なぜ薬が効いているかを理解するのは非常に難しく、医師、看護師にはあまりない知識です。

実際、看護師の方とお話しする機会がありましたが、何に使う薬かは知っているけど、どうしてそれが効くのかは知らないとおっしゃっていました。

つまり、薬剤師には他の医療従事者にはない専門的な知識があると思います。

しかし、その一方で「薬剤師さんは知識はあるけど何か物足りない」という声もありました。

専門知識以外にどんな能力が必要かについて調べてみました。

コミュニケーション能力の向上

ここで、私が薬学部に感じている疑問をひとつ紹介させてください。

それは、薬学部の学生は二極化が進行していることです。

コミュ力がめちゃくちゃあるコミュ力おばけの学生と、寡黙で人づきあいに積極的でない学生です。

やっぱり、医師や看護師、薬剤師って患者さんを相手にする職業ですよね。

さらに、薬剤師同士の同業者のつながりや、職種を越えたつながりがあって、初めて患者さんを治療できるようになると思うんです。

ここには必ず人と会話するコミュニケーション能力が必要になってきます。

しかし、自分の大学を見ているとどうしても、「そのコミュ力で大丈夫?」と心配になることがありました。

これだけ「モノからヒトへ」と言われている世の中で「ヒト」と対話できるのか疑問な学生が多いのが気になります。

仲間内ではよくしゃべるけど、新しい出会いを拒む人が多い気がしています。

「他大と飲み会するけど来ない?」と誘っても来る人はまれです。

新しい出会いをして、わざわざ馴染むのがめんどくさいと言われてしまいました。

薬剤師になるならないにかかわらず、それでやっていけるのか?と思ってしまいますね。

一方で、私大の学生と話していると、新しい出会いに対して積極的ですし、コミュ力の塊みたいな人がゴロゴロしていました。

こんなにも同じ薬学部生なのに違いが出るのかと思ってしまうほど。

国立、私立に関係なく、コミュ力はあるべきですし、学生のうちから学ぶ努力をするべきだと思っています。

これについては新しい記事でもっと詳しく書こうかな。

チーム医療への積極参加


薬剤師はチーム医療に最近になってようやく参加し始めました。

患者さんに対して医療従事者全体が一丸となってアプローチしていくことが重要であり、薬剤師の役割も大きくなっています。

また、災害時においても、薬剤師はチーム医療の一画を担い、活躍の場を広げていました。

東北大震災の時には「薬剤師」としての派遣要請はありませんでしたが、そこでの活躍が認められ始め熊本大震災や大阪北部地震では「薬剤師」として派遣要請があったそうです。

薬剤師は病院内でもチーム医療に参加していました。

例えば、栄養管理指導チーム(NST)などがあります。

NSTとは、入院中の栄養補給に関して医学的な介入が必要な患者さんに対して、回診をしているチームのことです。

簡単に言いますと、栄養管理の集団ですね。

医師、薬剤師、看護師などの他にも栄養士が入っていました。

腸や胃の手術によって普通の食事ができない患者さんに対して、経腸栄養や点滴などによって1日に必要な分のカロリーを取ってもらえるように、NSTが管理しています。

薬剤師はここで、どの補給液がいいか、点滴は何を使うべきかについて提案をしてチーム医療の一員として活躍していました。

私は実際にNSTチームを体験してきたので、それについてまとめました。
合わせて読んでみてください!

病院実習でチーム医療を疑似体験!NSTに参加しました!

このように、薬剤師が徐々に認められ始めていることから、今後もチーム医療への参加が求められます。

病気に関する知識をつける


薬学部の授業では「病気」に関する講義数が医学部、看護学部と比べると圧倒的に少ないと言われています。

薬に関してはかなり詳しくやっているけど、患者さんに対しての疾患の知識はまだまだ改善の余地があるでしょう。

チーム医療に参加していくためにも、病気、検査値、症状などについて自分から積極的に学んでいく姿勢が求められています。

卒業後にはさらに勉強する時間が確保しにくいことからも、大学序盤の方で意識的に勉強することが必要です。

実際、個人的な感想ですが、病気について知っていた方が、薬についての知識が定着しやすくなると思いました。

薬を単体で覚えるよりも、なぜその薬を使うか、どんな病気に対して効果があるのかを知っておくことで勉強に深みが出てくると思います。

患者情報の共有


患者情報を医療従事者の間で共有できるツールとして、現在最も使われているのはカルテです。

医師の処方や患者情報を一括で見ることができるので、情報共有がしやすいです。

一方で、薬剤師がカルテを見たくても、薬局では細かいところまでは見れないことが多いそうです。

患者の既往歴、薬の使用歴、検査値などの確認はできますが、医師がどんな検査をしたか、画像の診断まではアクセス権限がありません。

同じ医療従事者として、同じ患者さんに対して治療を行っているのに、なぜ権限の違いがでるのでしょうか。

一つは明確なツールがないことがあると思います。

電子カルテは元々、病院で使うものであり、薬局で見るようには設定されていないでしょう。

このことから、そのままの状態で放置され誰も声を上げずに改善されていないことから、薬局では見ることができていないと思います。

病院薬剤師は医師の電子カルテを確認できることからも、ツールがないということがより考えられます。

今後の課題としては、薬剤師が薬局にいても電子カルテ情報をしっかりと確認できるようなデバイスを作成していく必要があるでしょう。

これは薬剤師が言い出さない限りは実現できません。

実際、豊中市では特定の薬局と病院が提携し、患者情報の共有ができるシステムを導入していました。

私が行った薬局ではこのシステムが使われており、薬局にいながらも患者情報を見ることができ、服薬指導のときに活躍していました。

こういった取り組みは、全国的には広まっていないことからも、今後の課題であると思います。

薬剤師の未来

薬剤師が今後どうなっていくと思いますか?

こんな質問をされたらあなたはなんと答えますか??

遠くない未来では、医療業界にAI技術や機械化の波がやってくるでしょう。

実際、自動分包機や自動軟膏機などが薬局で使われるようになっています。

薬剤業務の大半が自動化されることは間違いありません。

調剤、監査、情報提供などの仕事はどんどん機械に取って代わられるでしょう。

薬剤師はせっかく広げてきた職能を、今度は機械によって取られてしまうということも考えられます。

しかし、今後の薬剤師はそういった荒波に耐え乗り越えるために、自分から行動する必要があると思います。

具体的には、患者さんがどうしたらもっとスムーズな医療を受けられるか、どうしたらより良いサービスを提供できるかを考えて、新しい方策を考えることが求められます。

患者個人に合ったテーラーメード医療や、コミュニケーション能力を活かした業務などはまだまだAIが参入できない仕事でしょう。

また、社会の変化に対応できる柔軟な思考、自分からアクションを起こせる行動力なども重要です。

まとめ

薬剤師に関する資料を読みながら自分なりにまとめてみました。

まだ、私は社会にも出ていないですし、薬剤師として働くかもわかりませんが、今の内から考えておいても損はないと思い、この記事を書きました。

ここに残しておくことで、後から見返した時にもきっと自分の指針を決めるのに役立つはずです。

また、色々な人と共有することで新しい価値などが生まれたら嬉しいです。