薬学部に在学中のみなさん、こんにちは、こんばんは!
管理人のけいです。
薬学部の5年生はどこの大学でも薬局実習を受けくてはなりません。
しかし、私が5年生になる前にはいまひとつ薬局実習がなんなのかを理解できていませんでした。
どんなことをするのか、何を勉強するのか、などあまり教えてくれる人はいませんでした。
誰か教えてよ~と思っても、なかなか先輩にお話を聞かせていただける機会も少なかったんです。
今回は薬局実習を終えた私が、まだ行ってない皆さんに対して、薬局実習がなんなのか、具体的なイメージを持てるように私がやってきた業務内容について紹介していきますね。
目次
薬局実習の概要
薬局実習を簡単に説明すると、「薬局の業務を体験するために2か月半薬局で働く」という感じです。
薬局実習は薬局で薬剤師がどんな仕事をしているかを、大学を飛び出して自分で体験し、薬剤師のあり方、必要性を学んでいこうという趣旨があります。
これは全ての薬学生が受けなくてはならない授業の一つで、「私は薬局に興味がないから行かない」という選択肢はありません。
全員が必修です。
薬局実習でやること
薬局実習では何をやるかって具体的に何をやるかイメージできますか??
ぼやっとしたイメージはあるけど、具体的には分からない人が多いのではないでしょうか。
ここでは具体的に何をやったかを紹介していきますね。
薬の取り揃え
ほぼすべての学生がこの作業から始まります。
業界用語では「ピッキング」と呼ばれています。
患者さんが持ってきた処方箋を元にして、棚から薬を取ってきます。
薬の数量と剤型、規格をしっかりとチェックしながら間違えないように取り揃えます。
例えば「アムロジピン錠20㎎、1回1錠1日3回10日分という薬が処方箋に書かれていたとしましょう。
そうすると、数量は1日3回×10日分なので30回分の30錠を取ることになります。
そして、剤型は錠剤のものをとります。カプセルや粉を取らないように注意です。
最後に規格は20㎎ですね。10㎎、30㎎、50㎎というように薬の規格がたくさんある場合があるのでよく処方箋を確認しましょう。
こんな感じの作業がピッキング作業であり、薬局実習に行った学生が最初にやる作業です。
薬の位置を覚えるのが大変ですが、慣れていけばどんどんスピードアップして効率よく作業することができるようになります。
薬局によってはあいうえお順に並んでいたり、薬効順に並んでいたりするので、自分の薬局のルールに合わせて覚えましょう。
処方監査
処方監査と聞くとちょっと難しい作業と思うかもしれません。
日常的に「監査」なんて言葉遣わないですし。
処方監査とは簡単に言うと「チェック作業」です。こう聞くと簡単に思えません?
薬を取りそろえた人と別の人が、処方箋と用意された薬が合ってるかをチェックしていきます。
ここでも先ほどと同じように、数量、剤型、規格をしっかり確認してください。
また、よくある間違えとしては「名前がそもそも違う」という場合があるんです。
そんなまさか、と思っていても実際の薬局ではこういった取り間違いがありました。
隣の別の棚から取っていたり、名前を勘違いしていたりすることがあるのでしっかり監査しましょう。
服薬指導、投薬
さて、次の業務は薬剤師のメインの仕事ともいえる服薬指導です。
薬剤師さんのイメージを一般の人に聞いてみると「薬を渡してくれる人」という答えが返ってきますが、まさにこれですね。
初めて服薬指導をするときはかなり緊張します。
本物の薬を実際に使っている患者さんに渡して説明をするわけですから本当に気を遣います。
私も初めてのときは緊張しすぎて口がカラカラになってしまったほどです。
具体的な手順としては下のようになります。
薬の再確認
患者さんの呼び入れ「○○さん、お待たせしました。」
薬の説明書を一緒に見ながら薬の説明
数量の確認
患者さんの状態を確認
薬を渡す
クロージング
この中で最も重要な仕事は「患者さんの状態の確認」です。
今日の具合はどうですか?
最近の調子はどうですか?
といった感じでいろいろ質問していきます。
これは患者さんと薬剤師が最も近づく瞬間であり、患者さんの生活スタイルや状態を詳しく知ることができるチャンスなんです。
薬の説明や薬を渡すのは、ぶっちゃけ薬剤師ではなくてもできてしまいます。
しかし、患者さんの具合を把握するのは薬剤師でしかできません。
患者さんが高血圧の数値を言えばそれについて薬剤師なりのコメントができますよね。
さらに患者さんの食事から、具体的なアドバイスをすることができます。
患:最近血圧が高くてね。
薬:どれくらいなんですか?
患:上が160で下が100もあるんだよ。
薬:ちょっと高めですね。最近はどんな食事が多いんですか?
患:最近は外食ばかりで。あとラーメンが好きでね。
薬:うーん、外食だと塩分量が少し多かったり、ラーメンの汁や麺にも塩分が含まれているので、ちょっと気を付けた方がいいかもしれませんね。
患:外食に塩分が多いのはなんで?
薬:外食は基本的においしくするために塩分を多めに入れて濃い味にすることが多いんですよ。
患:なるほどね。そしたらできるだけ控えた方がいいのかな。
薬:はい。できるだけ家で食べるようにしたら良いと思います。作るのが大変なら野菜サラダを買うといいと思いますよ。
こんな感じで薬剤師は患者さんの健康と生活をうまくリンクさせながらアドバイスをすることができるんです。
つまり、薬剤師と患者さんが話す「患者さんの状態確認」は大切な仕事なんです。
私はこのことを薬局実習を通じて感じました。
管理薬剤師さんの投薬業務の隣にいて、実際に患者さんとの会話を聞くことで初めて気づけたことだと思います。
一包化業務
「一包化」という言葉にはあまりなじみがないでしょう。
私も薬局実習が始まるまで知りませんでした。
文字だけ見ると一つの包装にまとめるのかな?って感じですね。
実際の一包化は複数の薬を一つの袋にまとめます。
通常の薬はシートに入っていて、飲む前に1錠ずつ出しますよね。
しかし、高齢になって手元がおぼつかなくなりシートから薬を取り出せなくなってきたり、1回に服用する薬の数が多すぎて管理しにくくなってきたりすることがあります。
患者さんの中には1回に8個くらいの薬を飲んでいる人もいるんです。
こういった患者さんたちはどの薬を飲んだかを把握しにくくなり飲み忘れの危険性が高まります。
整腸剤や便秘の薬であれば多少飲み忘れたとしても影響は少ないですが、血糖値や血圧の薬を飲み忘れると、数値が大きく変わってしまう可能性があり、非常に危険です。
その人たちからの要望もあり1回分の薬を1つの袋にまとめるように言われてきました。
そして登場してきたのが「一包化」です。
一包化をしておけば、患者さんが自分が飲む薬を視覚的に理解できるようになり、飲み忘れを防ぐことができますよね。
実習生はこの一包化業務を任されます。
複数の薬をシートから一つずつ取り出し、分包機にセットしていきます。
簡単な場合は良いんですけど、10種類以上の薬を一方かしろってなるとかなり大変なんです。
30分以上は分包機の前に釘づけにされ、ひたすらにシートから薬を取り出して一包化していきます。
業務を覚えたての頃は新鮮味があっていいんですけど、実習後半になってくると本当にめんどうな作業になるんです。
指先めっちゃ痛いし、普通に疲れるしなんだこの作業って感じです。
同期の話を聞いていると自動分包機があった薬局があり、その薬局ではボタン一つで一包化が終わったらしい。
羨ましすぎる。。。。
納入薬を棚に移す
薬局には毎日、薬が納入されます。
私が行った薬局では納入された薬を薬剤師さんが手作業で所定の場所にしまっていました。
この業務も実習生に任されます。
内容は簡単で、納入された薬をいつもおいてある場所にしまっていくだけです。
薬の場所さえ覚えていればすぐにできますね。
最初のうちは薬がどこにあるかが分からないので苦労します。
この薬はどこだっけ~?という感じですね。
そんなときはしっかり薬剤師さんに聞きましょう。「この薬ってどこでしたっけ?」と聞けばちゃんと教えてくれます。
聞かずにてきとうな場所に入れておくと後で怒られるので注意です!
学校薬剤師のお仕事に同行
薬剤師は薬局で薬を扱う以外にもたくさんの仕事があるんです。
その一つに「学校薬剤師」の仕事があります。
学校薬剤師は各小学校、中学校に配置され、定期的に学校の点検、検査を行います。
主な仕事は下の4つです。
水道水検査
照度検査
薬物乱用防止授業
私はこの中で照度検査以外のプール検査、水質検査、麻薬防止授業に同行してきました。
一つ一つ説明していきますね。
プール検査
プール検査はプールの授業が始まってから、プールの水質を検査しに行きます。
プールの水を採取して、pHや大腸菌の有無、塩素濃度、透明度、温度などを検査しました。
みなさんは小学校の頃、プールに白衣を着たおじさんが水を採取しているのを見たことないですか?
周りから見たら変な人だと思うんですけど、実はちゃんとした仕事をしているんです。
私が行った中学校は正常の値だったので問題なかったです。
もし問題が見つかるとプールの授業が中止になり、管理状態の改善が通達されるようです。
ちなみに、関係ないですがプール1回分の水を用意するのに10万円のお金が必要らしいですよ。
1日、プールの授業があるだけで10万円です。
そんなお金がかかっていたなんて。。。感謝するばかりですね。
水道水検査
水道水検査とは学校の水道水の様子をチェックします。
学校の水道水がきちんと飲めるかどうかを判断している人は、薬剤師だったんですね。
ここでもプール検査と同じようにpHや温度、色、塩素濃度を測定していきます。
塩素は殺菌力が強いため水道水に入れられることが多く、飲み水として安全を保障しています。
しかし、塩素濃度が濃すぎたりpHによって変化していると人体に影響がでることがあるんです。
体が火照ってきたり、体調が悪くなったりするんです。
このため、薬剤師が専門的な知識を持って検査をする必要があります。
私はこの業務に同行して、実際にpH測定や塩素濃度を測定しました。
内容は簡単なのですが最低限の薬学の知識がなければ務まらないと思いました。
検査結果を各市の薬剤師会に提出して薬剤師の業務は終了です。
問題があった場合には再検査をして、それでも改善してない場合には学校に通知が行くようです!
薬物乱用防止授業
薬剤師の役割の一つに「地域の子どもたちへの教育」があります。
薬剤師は薬局で薬を渡すだけではなく、その地域の子どもたちへ教育する立場にあります。
「街の科学者」とも言われるほどで、子どもたちに科学的視点を持つように促し、科学に興味を持ってもらうことが重要です。
また、子供たちが非行に走らないように教育することも必要で、その一環として薬物乱用防止授業があります。
薬物乱用防止授業では、なぜドラッグが危険か、どんな影響があるのか、実際に使ってしまった人の末路などを紹介し、子どもたちに薬物の恐ろしさを伝えていました。
私の管理薬剤師さんは動画を巧みに使い、ドラッグの危険性を目で見て分かってもらえるよう工夫していました。
子どもたちの反応を見ていましたが、かなり驚いた表情をする子や目を背ける子などがいて、薬物の恐ろしさが伝わったようです。
私が小学生の頃も薬剤師が来て、薬物について話をしていたのを思い出しましたね。
確かに子どもながらに恐い映像を見たと思います。
薬剤師が各学校を回り、薬物乱用防止授業をすることで、将来的に薬物に手を出す子どもを減らせたら良いと思いました。
薬局実習で学んだこと
続いて私が薬局実習を通じて学んだことを紹介していきます。
薬局実習では大きく2つのことを学ぶことができたと思います。
薬剤師の役割
薬剤師の重要性
実習に行く前と行った後では全く別の意見になっていたのを実感しました。
薬剤師の役割について学んだこと
私は薬局実習に行く前には正直、薬剤師は患者さんに薬を渡すだけだと思っていました。
「○○さんお待たせしました、こちらが今日のお薬です。1日○回飲んでくださいね。お大事に」のルーティンだと思っていたんです。
しかし、実際に薬剤師の役割はかなり幅広いということが分かりました。
薬を渡して説明する業務は、全体の1割程度で他にもたくさんの役割を持っていました。
例えば地域医療に参加して老人ホームの健康管理役を任されていたり、自分が知らない業務がたくさんあったんです。
これは指導薬剤師の先生が精力的に活動していることもあると思いますが、薬剤師が活躍の場を薬局の外に広げていくことによって、市民から必要とされる存在になっていくのではないかと思いました。
薬剤師の重要性
2つ目に学べたことは薬剤師はやはり市民にとって非常に重要であるということです。
薬剤師なんか医者と同じことしか言わないし、必要なんじゃないかっていう人がいます。
しかし、薬局実習を通して医者にはできなくて薬剤師にしかできない仕事があるということが分かりました。
医者に診察をしてもらう時、患者さんのお話をじっくり聞くことはなかなかできません。
実際、門前の糖尿病内科の先生の所に行くと、患者が常にいて患者一人当たりの診察時間は短く、じっくりとお話を聞いてくれる感じではなかったです。
医者も聞こうとはするんですけど、後に待っている患者のことも考えて、どうしても受け答えがおおざっぱになってしまう場面も見られました。
一方、薬局では一人の患者に対して話を聞く時間を必ず確保しています。
どんなに混んでいても、受け答えを適当にすることはなく、じっくり話をしていました。
薬剤師の先生は患者の気が済むまで丁寧に話をしていたのが本当に印象的でした。
正直言って、薬局実習に行く前は薬を渡す時の話なんて少しでいいんだろうと考えていましたが、会話が非常に多くて驚きました。
実習を通して薬剤師への見方が大きく変わったと思います。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。
この記事では薬局実習ではいったいどんなことをやるのかについて紹介してきました。
この記事は私の体験と同期の学生の体験談を合わせて書きました。
どこの薬局に行ってもだいたいこんな感じでしたね。
中には奇妙なところもありましたが、それについては別の記事で紹介していきます。
薬局実習を控えている学生さんは記事を読んでいただき、実習のイメージを膨らませてスムーズに業務に取り掛かれるようにしてくれたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。