薬剤耐性菌と抗菌薬の関係

今回は授業で薬剤耐性菌についての課題が出されました。

課題はこちらです↓↓↓
2014年4月、WHOは耐性菌の世界規模での拡大についての報告書を出しました。このようにMRSAやVRE 等の耐性菌の出現が拡大し、細菌の逆襲が始まったと言われています。こうした事態にどのような対処を行うべきでしょうか。

この改題を解決するためにまず、背景知識として抗菌薬について調べてみました。



抗菌薬とは??

抗菌薬・・・細菌の増殖を抑えたりあるいは殺傷能力のある薬と定義されています。

例えば、、、、β‐ラクタム系、マクロライド系、アミノグリコシド系などがありますよね。

ひとつづつ見ていきましょう。

ペニシリン・・・β‐ラクタム系

真正細菌の細胞壁の主成分であるペプチドグリカンの合成を阻害することで細菌増殖を抑え肺炎菌やブドウ球菌に対して選択毒性を高く示し、また人に対する毒性が少ないことから医療現場において使われるようになった。

エリスロマイシン・・・マクロライド系

呼吸器系の感染症に対する抗菌薬として使われ肺炎治療に効果があった。

ストレプトマイシン・・・アミノグリコシド系

バクテリアが持つリボソームの一つである23rRNAに対して選択的に結合しポリペプチド鎖の合成を阻害することで結核菌の増殖を抑え抗菌薬として使われるようになった。

抗菌薬の歴史

日本における肺炎死亡者数の推移を見てみると人口10万人に対し1900年の220から徐々に増加し1918年に408のピークを迎えペニシリンやエリスロマイシンが登場し始めた1940年代に減少速度が大きくなり1960年には100を切りました。このことから抗菌薬によって肺炎の原因菌を抑え込むことができたといえます。

1943年に発見されました。ストレプトマイシンが発見されるまで、人々の間では「結核=死」という概念が深く根付いており紀元前から存在する不治の病でした。しかし、ストレプトマイシンの治療効果によりその概念を変え人々に生きる希望を与えたと考えられます。(1)

日本において結核死亡者数を見てみると1900年の85132人から徐々に増加し1947年の146241人にまで死亡者数が増えました。しかし、その年を境にストレプトマイシンが治療方法に導入されるようになりその次の年から急激に死亡者数が減少しました。(2)

このように抗菌薬は多くの人類の命を救い、その開発は偉大な業績であるといえます。

参照:(1)Jiro Fujita, Editorial “Trend of pneumonia management in Japan” , 2013, 658-662 (2)疫学情報センター、「結核の統計」資料編2012、結核死亡者数及び死亡率の年次推移http://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/toukei/adddata/

薬剤耐性菌とは??

では次に薬剤耐性菌とはなんでしょうか。

薬剤耐性菌・・・抗菌薬の対象としている菌が、細胞分裂を繰り返すうちに遺伝子変異を起こし、抗菌薬の効果を弱めてしまいます。簡単に言うと、菌がパワーアップしたということです!

薬剤耐性菌が発生するメカニズム

細菌に対して抗菌薬が作られると最初のうちは抗菌薬が効果を示し細菌数は減少し感染症などの症状は軽減すると考えられます。

しかし。細菌が細胞分裂をする際、その子孫の中に薬剤耐性を持つ菌が含まれる可能性は十分に考えられます。

そして、薬剤耐性を持つ菌がいるまま同じ抗菌薬の投与を過度に続けることによりさらに薬剤耐性菌の数が増え、やがて薬剤耐性菌のみが体内で細胞分裂を行うようになり耐性を持つ菌が増殖するようになることで一定数の耐性菌が存在し感染症状が治りにくくなる、悪化することもあります。

過剰量の抗菌薬を使用することにより薬剤耐性菌の発生率を上げているということが考えられます。ペニシリンが登場したての頃は治療効果を期待しすぎるがゆえにペニシリンを乱用していたこともありました。(3)

参照:(3)細菌の逆襲―ヒトと細菌の生存競争、吉川昌之助、中公新書、発売日: 1995/03

薬剤耐性菌の種類

耐性肺炎球菌

ESBL産生菌

PRSP←さきほどのペニシリンが効きません、、、

etc….

アメリカにおける推定患者数と死亡者数は2013年の報告でMRSAが8万人、11000人、耐性肺炎球菌が12万人、7千人、VREでは2万人、1300人となっていました。(4)

数だけで見ても、非常に多くの患者さんがいるということが分かります。

また、日本国内においても1970年まで減少傾向の見られた肺炎死亡者数が2000年までには増加傾向に転じており(1)これもまた既存の肺炎抗菌薬が効かなくなってきているのではないかと考えられます。

参照:(4)Antibiotic Resistance Threats in United States, 2013

薬剤耐性菌に対する対策

近年では、患者数が増加傾向にある薬剤耐性菌ですが、国内や海外ではどのような対策が行われているのでしょうか。

感染関連の4学会が合同で提言した「多剤耐性アシネトバクター感染症の感染拡大防止に関する提言」の中では、多剤耐性の定義を決めること、症例に役立つサーベイランス体制を促進、多剤耐性菌検査が実施できる環境整備、新規治療薬の開発などが提言されています。(5)

参照:(5)多剤耐性菌アシネトバクター感染症に関する四学会からの提言http://www.kansensho.or.jp/guidelines/101020teigen.html

自分の課題に対する解答

下調べが済んだところで、課題に対して自分なりの意見を考えました。

下には私の意見が書かれていますが、あくまでも個人的な意見ということで興味がある方は見てください。

また、大学の課題で同じようなテーマを与えられている人は、参考にしてください。

そこで僕が提案したいことは新たに世界規模の薬剤耐性菌の感染縮小、撲滅を念頭に置いた機関を作るということです。

現在世界規模の保健機関としてWHOが存在しますが、この機関が常に薬剤耐性菌について話し合えるかというとそれは現実的に厳しいと考えられます。

現在ではリオデジャネイロで感染拡大しているジカ熱やアフリカにおけるマラリア、韓国で一時期流行していたMERSなどWHOは様々な問題に対して対応し、世界に向けて情報提供やガイドラインの作成をしなくてはならず、一つの課題に対して長期的に話し合いを進めるのは難しいのではないでしょうか。

またWHOは年一回にジュネーブで世界各国の首脳が集まり世界会議を行い、そこで事業計画の決定、予算の決定、執行理事国の選出、事務局長の任命等をしているそうですが(6)この一回の総会で薬剤耐性菌について話し合える時間確保できるかは疑問です。

WHOを地域ごとに細かく分けた地域的機関も存在しますが、この機関も年一回でしか集まらず日本が所属する西太平洋地域委員会の平成22年度から24年度の議事録を見ても薬剤耐性菌について話し合われた記録はなく(7)また、複数年で同じトピックがあげられたことはありませんでした。

やはり数多くの健康に関する話し合わなくてはならないこと、採択しなければならないことはとても多く、一つのことについて複数年にわたって話し合うということはWHOのような大きい世界機関では難しいと考えられます。

そこでやはり先ほど言ったとおり、耐性菌に特化した世界機関を作ることを一つの対策として提案したいと思います。

この機関を作れば一か月に一回という短いスパンでも集まることができるでしょうし、耐性菌についていろいろな角度から話し合う十分な時間を確保することも可能であると思います。

この機関では主に各国の官僚クラスの人が集まり互いの国の耐性菌感染者数、死亡者数、治療薬の開発状況などを報告するとともに、医療従事者や研究チームも集まり共同研究を行い新たな理療薬、新たな検査方法などを開発していきます。

日本では過去にアメリカや欧米の研究報告を取り入れずにキノホルムやサリドマイドなどの薬害事件を引き起こしてしまった経験もあることから、(8)世界と足並みをそろえ共同で研究をしていくことは、日本にとっても、世界各国とっても重要なことであると考えられます。

このような提案はいまだかつてされたことがなく、しかし世界規模の機関を作ることはWHO、WTO、UNESCOなど数多くの世界機関があることからも実現不可能な話ではいと考えられ、今後耐性菌撲滅、感染縮小を目標とした世界機関が設置されることを期待したいと思います。

参照

(6)外務省ホームページ、世界保健機関、概要http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/who/who.html

(7)外務省ホームページ、WHO西太平洋地域委員会の動きhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kokusaigyomu/who/wpro.html

(8)知っておきたい薬害の知識 ―薬による健康被害を防ぐために 出版社: じほう、発売日: 2011/2/15

突拍子もないアイデアではありますが、実際に設置されたら様々な効果が得られと期待しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。