私たちが普段飲んでいる薬っていったいどうやってできているのか不思議に思ったことはありませんか?
今回は非臨床試験を終えた治験薬がどのような臨床試験を受けるかについて紹介していきます。
非臨床試験を終えた治験薬は第Ⅰ相試験から第Ⅳ相試験を受け、実際の患者さんに対して、その有効性が出るかを調べていきます。
実験室では細胞やマウスに対して有効性を示したとしても、実際の患者さんに対して効かなければ、薬としては認められません。
では実際に各段階の試験法を見ていきましょう。
第Ⅰ相試験(臨床薬理試驗)
最初の段階では安全性を中心に調べていきます。
どれくらい投与しても体に害が出ないかや、副作用の種類などを把握します。
などを健康な治験ボランテイアの人に単回および反復投与することによって検査を行います。
抗悪性腫瘍薬などの強い毒性を持つ薬物では実際の患者を対象として行います。
この場合には、治験薬の薬効や治療上の有用性の予備的検討をすることができます。
薬物動態試験では治験薬のクリアランス、未変化体または代謝物の蓄積の可能性および薬物相互作用の可能性を予測します。
代謝物が意図しない部分で蓄積すると、予期しない疾病を引き起こすことになります。
主な例として、アルツハイマー病があります。アルツハイマー病はアミロイドβが海馬に溜まることによって起こります。
このようなことを防ぐためにも第Ⅰ相試験を行います。
第Ⅱ相試験((探索的試驗)

この段階では治験薬が患者に対してどのような治療効果を示すかを探索することを主要な目的として試験を行います。
初期の探索的試験では、比較的均質な集団になるように比較的狭い基準に従って選択された患者を対象として、治験薬の有効性を評価していきます。
また、第Ⅲ相試験で行われる試験の用法・用量を決定することも目的の一つになっています。
用量反応の初期的推測のために、用量の漸増デザ インを用いる。
続いて、並行用量反応デザインを用いて目的している適応方法に対する用量反応関係をかくにんします。
第Ⅱ相でのもう一つの目的は、その後の試験において使えそうなエンドポイント、治療方法、適切な患者群を探すことにもあります。
第Ⅲ相試験(検証的試験)

治療上の利益を証明、確認することを目的として試験を行います。
目的とする適応および対象患者群において、第Ⅱ相で予測された治験薬の有効性、安全性についてのデータを検証していきます。
用量反応関係をさらに詳しく探索したり、より広い対象患者や病態の異なるステージでの有効性、他剤との併用の効果についても検討します。
また、長期投与による効果や 安全性を検討し 医薬品の適切な使用法を確立するための情報を収集します。
実際の患者さんに対して薬を投与し、その薬が本当に効果があるのかを調べていきます。
この試験は病院などで大規模に実施されていて、毎年いくつもの新薬候補が試験されていました。
実際、私が行っていた病院でも治験があり、目の前の治験薬を見て胸がわくわくしましたね。
将来的に自分もこんな薬の開発に携わりたい!と強く思いました。
第Ⅳ相(治療的使用)
この段階は医薬品の承認された後に始まります。
この時点までにその医薬品の安全性、有効性が確認され、適切な用量も設定されていますが、これらの情報は限られた患者から得られたものにすぎません。
第Ⅳ相試験では、患者の範囲を広げ治験薬の一般性を調べていきます。
より広い対象患者に使用されるので 葉物相互作用試験、用量反応試験、安全性試験、適応疾患における使い方を裏付けるための試験などを行い、その医薬品がより適切に使われるために必要な情報を集めます。
また、製造販売後の試験を含む情報の収集、評価、対応、伝達、保管などの調査を適正に実施するために「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準、Good Post-marketing Study Practice, GPSP」が定められています。
薬ができるまでには本当に長い道のりがある
これらの各相試験をクリアすることで、初めて治験薬は一般薬として発売されます。
ここまで非常に長い年月を要し、莫大な資金も必要になります。
最初の化合物が見つけ出されて、最後の第Ⅳ相試験をクリアし市販される薬の確率は非常に低く、多くの化合物がドロップアウトしていきます。
そう考えると、今発売され、私たちが普段服用している薬がどれだけすごいかが分かりますね。
このような裏事情を知ると、なにげなく使っている薬に対する見方が変わるかもしれませんね。