HIV感染症の基礎知識

近年増加し続けるHIV感染者
みなさんはHIV感染症について知っていますか。

HIVは最近になって新聞やテレビで取り上げられ、私たちが耳にする機会が増えてきていますね。

まずはHIV感染症の概要について知っていきましょう。

HIV感染症とは?

HIV 感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が体内に感染し、人間の免疫系を支えている免疫細胞や免疫組織に感染し、その機能を破たんさせていく疾患のことです。

進行性の疾患であり、一度感染してしまうと長期的に治療をしなくてはならないのも特徴です。

また、人体の免疫機能が低下してしまうので、普段は影響のない細菌やウイルスに感染しやすくなります。

人間の手のひらや口の中、皮膚表面には多数の細菌が住んでいますが、免疫力が著しく低下することによってこれらの細菌が害を及ぼすこともあり得るのです。

カリニ肺炎などの日和見病やカポジ肉腫などの日和見腫瘍を併発しやすくなります。

これらを併発した状態は後天性免疫不全症候群(AIDS)と呼ばれます。

HIV感染症の存在が初めて分かったのは1981年のことで、アメリカで発見されました。

その後多くの研究機関でウイルスの分離研究が行われ、1983年に初めて分離されました。

HIVは世界中に急激な速度で拡大していき、HIV患者数は増え続けています。

WHOはHIV拡散防止のために様々な取り組みを行いますが、感染拡大に歯止めがかからない状態が続いています。

日本では1985年に初めてエイズ患者が確認されました。

患者数はそれ以降増え続けており、2005年には累積HIV感染者、AIDS患者は10000人を超えています。

近年のHIV感染者変化

日本のHIV感染者とエイズ患者の最近の動向を少し見てみましょう。
下のグラフを見てください。

HIV感染者、エイズ患者は年々増加しており、平成26年の時点でHIV感染者がは約17000人、エイズ患者が7700人まで増加しています。

この数値は患者数が増えているととらえることができますが、別の角度から見れば世間にHIVとエイズに関する知識が普及し、検診を受ける人が増えて発見される件数が増えているということも考えられます。

そのため、全てに対して悲観的になる必要はありませんが、それでも毎年増加していることに対しては注意しなくてはなりませんね。

また、日本以外にも中国や韓国、インド、インドネシアなどアジア各国で急速に流行が広まっており、世界規模で何らかの対策が必要になることでしょう。

地域的な特徴

従来は東京都をはじめとした関東地方を中心に増加傾向がみられています。
2000年以降になると、東京以外にも大阪、名古屋、福岡などの主要都市で増えています。

この一つの原因としては、外国人が他都市に比べて多く、海外からの感染拡大が考えられています。

年代別の特徴

20歳以下の全体の35%、30代が40%を占めており、比較的若い人への感染が増加しています。

感染経路別に見た特徴

ほとんどの場合が性交渉による場合がほとんどです。

性交渉をした相手がHIVに感染していた場合、相手に感染してしまう可能性があります。

性交渉前に相手に確認するのは非現実的ですので、避妊具をつけることによって未然に防いでいくことが大事ですね。

ヒト免疫不全ウイルスの特徴

次にヒト免疫不全ウイルスの基礎知識を学んでいきましょう。

いったいどんなウイルスなのか、どうやって増殖していくのかを紹介していきます。

HIVの基本データ

ヒト免疫不全ウイルスはレトロウイルス科に属するRNAウイルスです。

大きさは直径110nmほどで、HIVタイプ1(HIV-1)とHIVタイプ2 (HIV-2)に分類されます。

HIV-1は全世界に流行し、HIV感染拡大の主要な原因となっていますが、HIV-2は西アフリカ地域に集中して流行しているようです。

HIV-2はHIV-1に比べて、比較的感染力が弱いことから感染拡大しにくいのではないのかと考えられています。

ヒト免疫不全ウイルスの増殖過程

HIVはCD4と呼ばれる細胞膜タンパク質を受容体として細胞に感染します。

CD4タンパク質はヘルパーT細胞やマクロファージに発現しており、ヒト免疫不全ウイルスはこれらの細胞に感染することで細胞性免疫を弱くしてしまいます。

これによって免疫系が低下し日和見感染をおこしやすくなるのです。

さらに詳しく増殖過程を見てみましょう。
下の図を見てください。

①吸着・融合

HIVはCD4陽性Tリンパ球やマクロファージの表面にあるCD4受容体に吸着し表面の細胞膜と融合する。

②侵入・脱核

核内のウイルスRNAが細胞内に放出される。

③逆転写

HIV RNAが自身の逆転写酵素によってRNAをDNAに逆転写してウイルスDNAを自ら合成する。

④転写・複写

HIV DNAが核内に運ばれ細胞のDNAに取り込まれ、そのDNAがRNAを合成する。
このRNA内にはHIV RNAが含まれている。

また、DNAはタンパク質とプロテアーゼを合成し、HIVの機能タンパクが合成され、新しいHIVが放出されるための準備が整う。

⑤出芽・放出

HIV RNAと機能タンパクから新しいウイルス粒子が組み立てられ、成熟したウイルスは宿主細胞から放出される。
ここからさらに新しいウイルスが別の細胞に感染し、身体全体にHIVが拡散していくのである。

HIV感染症の経過

続いてHIVの感染症の病期について勉強していきましょう。

感染期は大きく分けて3つに分けることができます。

①急性感染期
②無症候期
③エイズ発症期

HIVに感染してから、エイズを発症するまでの期間は数年から20年と患者個人によって異なります。

ある程度の潜伏期間があり、発症までに時間がかかるのが特徴です。

②の無症候期の長さが別々なのが理由と言われています。

一方で①の急性感染期と③のエイズ発症基の長さはほとんど同じであると言われています。

このことから、無症候期のHIV量をどうやって管理していくのかがポイントになります。

HIVの主な感染経路

HIVはリンパ球などの宿主細胞内でしか生きることができず、血液、精液、膣分泌液、唾液、尿などの体液や組織や臓器に存在している可能性があります。

主な感染源としては血液、精液、膣分泌液と言われています。

HIVは性行為や血液媒介によって感染します。
また、母乳を介した母子感染も知られています。

唾液感染や昆虫媒介感染はありません。

他人と血液や体液を介した接触がない場合にはHIVに感染する可能性はありません。

HIV はリンパ球の中でしか生きられず、主にHIV 感染者の血液、精液、腟分泌液、唾液、母乳、尿、涙などの体液のほか、組織や臓器にも含まれています。

性行為感染

異性間、または同性間の性行為が主な感染経路で、世界中で感染が増えてしまう原因です。

しかし、人類の発展において性行為をしないわけにはいかないので、非常に解決が難しい問題と言えますね。

男性から男性、男性から女性への感染が多く、女性から男性への感染は少ないと言われています。

このことから男性側が女性に移さない、という意識を持つことが必要でしょう。

母子感染

HIVに感染している女性が妊娠した場合、子どもへ胎盤感染や母乳感染してしまう可能性があります。

血液感染

HIVに感染した患者から採取した血液を輸血した場合や、血液製剤を使った場合に感染の可能性があります。

また、汚染された臓器の移植や注射の使いまわし、針刺し事故も感染拡大の原因の一つですね。

まとめ

さて、HIV感染について分かっていただけましたでしょうか。

HIVの恐ろしさや危険性を理解してもらい、自分でもできる活動を始めてみてはどうでしょう。

また、なかなか学ぶ機会が少ない分野だと思いますので、これをきっかけに勉強するといいと思います。